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積極財政なしには万博も成功しない!〈前編〉

万博の「コスパ」を考える

■万博の収支は二の次、三の次?

 1928年11月22日にパリで署名された「国際博覧会条約」(ただしその後、何度か改正されています)は、博覧会について次のように定義しました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/jyouyaku.html

 博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段、または人類の活動の一もしくは二以上の部門において達成された進歩、もしくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう。
(読みやすさを考慮し、表記を一部変更のうえ読点を追加)

 分かりやすく整理しましょう。

(1)    一般の人々を教育することを主要な目的とする。
(2)    文化や科学技術を展示する。後者については、最先端のものにポイントを置く。
(3)    将来の科学技術を予想してみせる。

 これが博覧会の条件です。

 

 よって文化や、最先端、ないし将来の科学技術について、一般の人々の理解が深まりさえすれば、万博は成功と呼べるはず。
 採算が大赤字だったとしても問題ではありません。

 はたせるかな、京都大学の山中伸弥教授は、今年6月の万博誘致プレゼンテーションで、「大阪万博は未来の科学者たちを魅了してやまない実験室になる」と語りました。
 この際には安倍総理も、「世界中の子供たちの胸を高鳴らせる万博になる」とのメッセージを寄せています。

 そうだ! 人々、とくに若い世代に夢を与えることができれば、カネ勘定なんて二の次、三の次! それこそ、万博の精神だろう!
 と、言いたいところですが・・・

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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